「BRUTUS」(マガジンハウス刊)5月1日号によると、現在は第5次ワインブームだという。1960年代の一升瓶入り国産ワインから始まって、ボージョレ・ヌーボー、価格破壊の時代を経て、昨今の赤ワインブームと続く。
この赤ワインブームはフレンチ・パラドックスによるものだ。1993年に米国の学者が、「バターや生クリームをふんだんに使った肉料理を多く食べるフランス人の心臓病による死亡率が少ないのは、赤ワインを日常よく飲んでいるからだ」と発表したからである。つまり、赤ワインに含まれるポリフェノール酸が動脈硬化を防ぐということだ。
もっとも、ポリフェノールは白ワインにも含まれていて、いま、白ワインの逆襲も始まった。
それはともかく、ことしのワインのテーマは「ヴァン・ド・ペイ」である。「フランスの地ワイン」といった意味で、気軽にワインを飲もうよという呼びかけである。地ワインは、日本の地酒と同じように、風土に根ざしたものであるから、料理もその地方の郷土料理がよく合うということで、現在、フランスでは郷土料理を見直そうという動きが出てきている。
一方で「セ・パージュ」という動きもある。これは、ブドウの品種でワインを紹介するもの。赤ワインならカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールなど、白ならシャルドネ、セミヨン、甲州などで、国によって基準が異なるが、オーストラリアなら85%までが単一品種であれば、その名を表示できる。
オーストラリアやアメリカなど「新大陸ワイン」と呼ばれるものが主力で、これに対抗する意味で打ち出してきたのがフランスの「ヴァン・ド・ペイ」ではなかろうか。
(岸朝子) |