• シャンパンのカクテル

フレンツェのバーでのこと。暑い中を歩き回ってのどが渇き、カウンターに座るなり「シャンパン」を注文した。バーテンはこわい顔で「ノン」。隣で飲んでいる客のフルートグラスを指さして日本語で「飲んでいるじゃない」とつぶやくと、にっこり笑って「スプマンテ?」。発泡ワインをスプマンテということを初めて知った。もう15年近く前のことである。

 シャンパンはシャンパーニュ地方で生産されるものだけの名称であることは、日本でも知られるようになった。先日、フランス大使館で「エスプリのシャンパーニュ」という催しがあり、88種ものシャンパンが紹介された。全部は飲みきれなかったのは残念だったが、西麻布のレストラン・シャンパンバー・Wでは、常時30〜40酒類のシャンパンを飲ませてくれる。きりりと冷えたシャンパンをグラスで味わえるので、入門にはおすすめだ。ついでにこの季節、シャンパンのカクテルをソムリエの大貝さんに教えてもらった。

 いまが旬の桃のフレッシュジュースと合わせたのがベリーニ。ルネサンス時代の芸術家の名を冠したカクテルは、淡いピンク色で、さわやかな味だ。

 ラム酒に漬けたフランボワーズをグラスの底に沈め、シャンパンを注ぐキールインペリアルは、深紅の実の周囲から細かい泡が限りなく立ちのぼり、見た目にも清涼感がある。ほかに、オレンジジュースを加えたミモザ。クレーム・ド・カシスを合わせたキールワイヤルなど多彩。

 私の特製は日本酒とシャンパンを4対6の割合で合わせたアサコ・スペシャリティー。さわやかで日本酒のこくがある。本来、シャンパンというのは愉快な飲み物であるから、結婚式の格式張った乾杯を忘れて楽しみたい。

(岸朝子)