「シャンパンは、見る、聴く、味わうの順で飲んでください」といわれて驚いた。ミスター・スタンプス・ワインガーデンのソムリエ、磧本修二(せきもとしゅうじ)さんと対談したときのことだ。
磧本さんのまねをしてグラスを耳もとに当てると、「シュワ、シュワ」とシャンパンのささやきが聴こえてきた。黄金色の輝きと泡立ちに気をとられて、ささやきには気づかなかった。サイダーも栓を抜くと、一瞬「シャワー」と音をたてるがすぐ静まる。磧本さんは「サイダーは童謡、シャンパンはクラシック」と評していた。立ちのぼる泡が消えない限り、シャンパンのささやきは続く。
サイダーは炭酸水だが、シャンパンは、第一次発酵が終わったワインに糖分と酵母を加え、瓶に詰めなおして二次発酵をさせるため、酵母が生きている。フリュートグラスの中で泡が一直線に立ちのぼるものがある。これは、柄のつけ根の中央に三角の切り込みを入れて泡を集める仕掛けで、見ていて美しい。
前回、シャンパンベースのカクテルを紹介したが、いちばん有名なものを書き落としていた。シャンパンカクテル。ハンフリー・ボガート主演の映画「カサブランカ」で「君の瞳に乾杯」と飲み干したものだ。底に沈めた角砂糖から泡がわき出て美しい。
黒ビールとシャンパンを半々に合わせたものはブラックベルベット。その名の通りにベルベットのつややかさと、なめらかな味わいのカクテル。
ブラックレインは、サンブーカのブラックを、ヘミングウェイはベルーノを、辛口のシャンパンに9対1の割合で合わせる。最近の流行はシャンボールロワイヤル。カシス、フランボワーズにレモンやハーブなどを加えた、いまふうな味のカクテルだ。
(岸朝子) |