• ワインの神、ウィーンへ導く (1999/11/22)

フランスのボージョレ・ヌーヴォーが18日、解禁になった。いっときほどのバカ騒ぎはないが浮き浮きとした気分だ。ことしの新酒とあって、フルーティーで若々しい味がいい。

ところで、それより以前、11月11日はオーストリアの新酒祭。毎年この日に行われるワイン洗礼式では、牧師が神に収穫を感謝する祈りを捧げたあと、若く美しい乙女が樽からワインを吸い上げて各自のグラスに注ぎ、乾杯をする。

その儀式が、ことしは4日に行われた。にほんでも何回か洗礼式に立ち会ったが、今回、オーストリア農林省主催の新酒祭に招待され、初めてウィーンで体験した。この祭りのとき、ワインに関する文化活動をした人に政府が贈るバッカス賞を受賞したためである。

バッカス賞は20数年前から行われ、これまでの受賞者は70人。オーストリアの元大統領をはじめ音楽家や作家、建築家などで、この日私と一緒に受賞した71人目はマレックさんという俳優で、自宅のワインセラーには数千本のワインを貯蔵、その知識は専門かも顔負けという男性だった。私は72人目だが、ジャーナリストで初めて、女性で初めて、日本人で初めての初めて尽くしだという。

授賞式は、ハプスブルク王朝の宮殿だったホーフブルグで行われた。ハプスブルク家のかっての栄光を偲ばせる美しい装飾の図書室である。ヴァイオリンの演奏で始まった式には農林大臣やウィーン市長をはじめワイン関係者数百人が参加。荘厳な中にもウィーンらしい華やぎがあった。私はオーストリアのワインと文化の普及に貢献したというのが受賞の理由。のんべえの私をワインの神、バッカス様がウィーンに導いてくれたと感謝した。

(岸朝子)