• あらばしりの季節 (2000/01/17)

本酒も昨年秋に収穫した米で仕込んだ新酒が出回るころだ。毎年この時期、飲んべえ仲間が集まって「あらばしりの会」が開かれる。元朝日新聞記者重金敦之さんの主催で、画家の風間完さんや漫画家の加藤芳郎さんなどがメンバーの楽しい会だ。

日本酒は、蒸した米に麹菌を振りかけ、保温して菌を繁殖させて、まず麹をつくる。これを蒸した米と水に加えて酵母を増殖させた酒母をつくるが、酒のもとになるので、モトと呼ぶ。モトに水と蒸した米を加え、糖化と発酵を同時に行う。仕込みを3回繰り返し、最後の仕込みから18日ほどでアルコール分20%近くの、世界でいちばんアルコール濃度の高い醸造酒「もろみ」ができる。

もろみを搾って液状の酒と固形部分の酒粕に分け、酒を濾過したものが生酒。もろみを搾ったとき最初に出てくる白濁した酒が「あらばしり(新走・荒走)」で、麹菌が生きているので、びんを振るとシャンパンのように蓋が飛んで溢れることもある。

生酒は酵母の働きを止め、腐敗を防ぐために加熱処理、つまり火入れをしてから熟成させる。火入れをせずに貯蔵し、びん詰めの段階で加熱処理したものは生貯蔵酒。生酒と生貯蔵酒が、いま人気の冷酒だ。

純米醸造酒は米、米麹に水だけが原料だが、本醸造酒はもろみを搾る前にアルコール添加をしたもので、きれがよい。本仕込み、本造りともいう。吟醸酒は玄米の精米歩合が60%以下の白米を使用した、純米醸造、または本醸造の酒。リンゴやバナナに似た香りの吟醸香が特徴で、大吟醸と名が付くものは精米歩合が50%以下。私自身は吟醸香の強い酒は料理の味を損なうので、食前または食後に飲むにはよいが、食事中は避けている。

(岸朝子)