フランス料理のコースでデザート、コーヒーのあとにディジェスティフをすすめられる。消化を助けるといわれる、甘みが強いかアルコール度数の高い酒だ。対照的に、食前酒アペリティフは食欲を増進させるもので、シャンパンやシェリー、ベルモット、カンパリなど軽い酸味や苦みのある酒またはカクテルだが、アルコール度数の高いものや甘みが強いものは避ける。
昨今のワインブームもようやく落ち着き、若い人を中心に日常的なものとなって、おでんや焼きとりの店にまで数種のワインがおかれるようになった。食前酒も一応注文する客は増えてきているが、食後酒まではまだ至っていない。
ディジェスティフが消化を助けるというのは名目であって、飲んべえは強い酒で飲み足りなさを補うし、デザートやコーヒーで終わるのは何となく落ち着かない人にとっても、あと一杯飲みたい酒である。
アルコール度の強い酒といえば、ブランデーだ。ワインを蒸留したアルコール度40〜42度の酒で、芳醇な香りとまろやかな味は人を魅了する。アルマニャック、コニャックはそれぞれが地方名を名乗り、フランスでもその他の地域のものはフレンチブランデーと呼ぶ。シャンパーニュ地方でつくられたもの以外は、シャンパンではなくヴァンムスーと呼ばなくてはならないのと同じで、フランス人のワインにかける情熱というか厳しさを垣間見る思いだ。
ワイン用ブドウの搾りかすでつくるブランデーはマールと呼び、高級品は価格もよいが味もまろやかで満足感がある。カルバドスはフランスのノルマンディー地方でつくるリンゴが原料の酒で、アルコール濃度はブランデーと変わらない。甘い酒ではポートワインやグリーンの薬用酒シャルトリューズなどがお薦めだ。
(岸朝子) |