• デザートワイン (2000/03/27)

冷酒、生酒など日本酒にもいろいろなタイプがあるが、食前酒や食後酒といった分類はない。

ワインの世界は違う。

スペインのシェリー、ポルトガルのポートやマディラ、イタリアのマルサラは、ワインの発酵途中または終わりにブランデーなどを加えてアルコール度と甘味を高めたもので、食前酒やデザートワインとして楽しむ酒だ。酒精強化ワイン、アルコール強化ワインと呼ばれ、アルコール濃度は22度とやや高め。小ぶりのグラスでそのまま飲むほか、シェリー酒はトニック・ウオーターで割って飲んだりもする。

甘口のデザートワインとしては、貴腐ワインとアイスワインがある。貴腐ワインは枝についたまま菌によって干しぶどう状になり、糖度が高くなったぶどうが原料。ハンガリーのトカイワインやボルドーのソーテルヌ地区にあるバルサック、シャトー・リューセックなどが有名。糖度の高いものは、とろりとしてハチミツのような甘みと適度な酸味で至福のワインと呼んでよい。

アイスワインは、ハンガリー国境に面したオーストリアのブルゲンランド地方で、はじめて出合った味だ。厳冬下、凍りついたぶどうの房を朝早く手で摘む。氷が溶けないうちに搾りとった少量の果汁を醸したものだ。貴腐ワインよりさっぱりした甘味と酸味でデザートによく合う。

このほか、収穫後の房を4カ月ほど陰干しにして干しぶどう状になったものからつくるデザートワインもあるし、ブランデーをぶどうジュースに加えたデザートワインもあって種類は豊富だ。甘口のデザートワインは口当たりがよく、飲み過ぎると急激に酔いが回るのでご用心。酒は人生を楽しむためのものである。

(岸朝子)