最後に、私が参考にしてきた酒に関する本をご紹介しよう。いまはもう絶版になった幻の名著もあるが、図書館にでもあればぜひご一読を。
私が最初に出あったのは東京大学名誉教授だった坂口謹一郎著『日本の酒』(岩波書店)であった。酒の博士、酒の神様といわれた方であるが、文章は平易で読みやすく格調があった。昨年秋、郷里である新潟県頸城村に「坂口記念館」(TEL:0255-30-3100)が開館。博士の業績を知るだけでなく、日本の酒の勉強になる。
講談社の『日本の名酒事典』も私の参考書。俳優の渡辺文雄さんと作家のC・W・ニコルさんと私が3人で座談会をしたが、渡辺さんが「日本酒のコピーというのは馥郁たるとか芳醇なとか、未練の言葉が多い。(中略)走る酒とか動詞にすべきだ」と言われているが、同感である。若い人たちに魅力のあるコピーの誕生を願う。最近の本では永岡書店の『日本酒カタログ755』がわかりやすい。
焼酎に関しては私の酒の師匠で焼酎博士と呼ばれた菅間誠之助著『焼酎の事典』(三省堂)が詳しい。ビールは嵐山光三郎編の『全国「地ビール」大全』(光文社)がおもしろい。
さて、ワイン。書店にあふれていて、ソムリエ世界一の田崎真也さんの著書だけでも20冊以上。中でもお薦めは新潮社の『ワイン生活・楽しく飲むための200のヒント』。ワインに関するQ&Aでまとめてある。山本博著『フランスワインガイド』(柴田書店)をはじめ、イタリアやドイツ、カリフォルニアなど各地のワインを紹介する本も多い。カクテルは上田和男著『カクテル』(西東社)が私の座右の書だし、飲み仲間の重金敦之著『利き酒入門』(講談社)は酒全般の入門書としておすすめしたい。
(岸朝子) |