かの魯山人の言葉に、
料理を味わうには料理人ひとりに食べる人6人が理想、
といった意味の言葉がありますが、
これにぴったり当てはまるのがこの店です。 カウンターが8席だけの小さな飾らない店で、
ご主人の鷲阪さんは懐石料理の名店『辻留』で
みっちり修業を積んだ人です。
師匠の故辻嘉一氏ゆずりの椀盛りなどはたいへん華やかです。
また、500人分の松花堂弁当の仕出しなども、
ときには引き受けます。
なにをいただいても満足のいく味ですが、
写真の二品は特におすすめ。
“棒ずし”は、しょうゆをつけなくてもいいように、
すし飯の味をやや濃いめにするのがコツです。
添えた煮物は、いうなれば“かぶとかきのふろふき”です。
ゆっくり味を含ませたかぶと、
ぷるんとした弾力を残して酒蒸したかきに、
とろっとした甘いさくらみそをかけてあります。
取り合わせの妙もさることながら、
このようなやさしい味わいこそが『福寿』の真骨頂といえます。 |