▲合鴨のロース煮 |
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15年ほど前の夏の夕暮れ、銀座の裏通りを歩いていて、 なんとなくひかれ、『今井家』という暖簾をくぐりました。 いちげんの、しかも女性のひとり客を、 ご主人はにこやかな顔で温かく迎えてくれました。 お造りなど数品を頼み、 「これでいくらだったらまた来よう」と思っていたら、 ぴったりの値段。以来、なじみの店になりました。 常連さんが「きょうもここでご飯を食べよう」と やって来るような品ぞろえの料理は、 どれもていねいな仕事ぶりで、 煮こごりなどの素朴な品にも細やかな心配りがなされています。 また、魚は希望をいえば、 刺身でも煮物でもいかようにも調理してくれます。 わたくしが必ず注文するのが、“合鴨のロース煮”です。 へたをすればしつこくなる鴨の脂肪がほどよく抜け、 しかもうまみはしっかり生きたまま。 火を止めたあと、蒸らすのがコツだそうです。 まさに素材の味を生かした一品です。 食べながらご主人と食材についてあれこれ話すのも、 80歳を過ぎた女将さん丹精のぬか漬けを食べるのも 幸せなひとときです。 |
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