▲芝えびしんじょ


神楽坂は一歩横丁に入ると打ち水をした家が並び、
三味線の音色が聞こえてくるような粋な街。
そんな雰囲気にぴったりで、
江戸っ子のいさぎよさを感じさせてくれるのがこの店です。
初夏、そら豆を注文すれば「あいよっ」と威勢よく応じ、
目の前で鮮やかにゆで上げ、熱々を出してくれる……。
そんなところが大好きです。
ここでとにかくおいしいのが、“芝えびしんじょ”。
江戸前の魚といえば
芝えび、あなご、きすといったところが主ですが、
この一品はまさに江戸前の魚料理の代表格でしょう。
揚げたてを、塩もレモンもかけずに
「はふはふ」と食べるのが、わたくしの食べ方。
気どっていたら、おいしさは逃げてしまいます。
ほかに、夏のじゅんさいのつき出し、あゆの一夜干し、
こちの洗いなどのほか、秋はまつたけの料理、
冬はたらちりや寄せ鍋などの江戸の味が味わえます。
最近は関西料理の系統が多くなった東京で、
数少ない江戸の粋を残している店です。
ご主人は、神楽坂でも歴史が古い料亭『うを徳』の次男。
明治29年に曽祖父が開いた店で、
この曽祖父は泉鏡花の『婦系図』に登場する
威勢がよい魚屋のモデルになった人といわれています。
ときけば、この店の主人のきっぷのよさも納得できます。

 めの惣 

東京都新宿区神楽坂4-3 TEL 03-3267-8180
営業時間 17:30〜22:00 日曜・祝日休 コース \10,000(おまかせ)