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遺伝子組み換えも改良の流れ

2001年3月28日(水) 共同通信社配信

 最近、スーパーなどで赤米や黒米を見かけるようになった。どちらも古代米と呼ばれ、ミネラル類が豊富でからだによいという点で人気が出てきている。

 赤米は縄文遺跡から発掘され、日本で最初に栽培された米と推測されているが、これはうるち米の系統。黒米はもち米の系統で、中国や東南アジアで栽培されている。どちらも日本に伝来したもので稲作文化の起源になっている。

 現代に流通している米は、私たちの祖先が改良に改良を重ねてきたものだ。現在人気いちばんのコシヒカリは、昭和31(1956)年に福井県の農業試験場で誕生した。

 明治時代においしい米として評判だった「旭」と「亀の尾」の二つの品種の血を引いたもので、新潟をはじめ全国で栽培されている。

 さらに、味がよいことで人気があるササニシキも、コシヒカリの兄弟であるというぐあいだ。

 米に限らずサツマイモやジャガイモなども生産性を高めたり、味をよくしたりということで品種改良の歴史がある。最近話題となている遺伝子組み換え食品も、この品種改良の流れのひとつ、と私はとらえている。

 交配により植物や動物を改良したり、酒やみそをつくるための微生物、つまりカビの仲間であるコウジ菌を改良したりしてきた。たくさんあるコウジ菌の中から優れたものを選び出して交配を繰り返すことで、アルコールをつくる働きの高いものを生み出すという技術を私たちの祖先は伝えてきた。

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(イラスト阿部早子)

 牛や羊、豚などの家畜にしても、野生動物であったものを、交配により品種改良を行った結果と言える。

 遺伝子組み換え技術は、このように生物の持つ機能を上手に利用するために開発されたものだと聞く。

 生物から取り出したよい遺伝子をほかの生物に導入することで、農作物などの改良を容易にするものであるが、一般にはこの世に存在しない新しい物質といった印象が強く、賛成、反対の議論がかまびすしい。

 遺伝子の操作でクローン牛などが登場してくると「人間は自然をどこまで変えるのか」と不安になる。

 だが、食料の不足問題も大きなテーマになる21世紀、遺伝子組み換え技術を、昔からの交配改良という視点で考えることも必要ではないだろうか。

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