oishu-s.JPG (4542 バイト)

孫と自慢料理を囲もう  世界で広がる「食育」

 2001年4月18日(水) 共同通信社配信

 先日、NHK教育テレビの「今夜もあなたのパートナー」という番組に2日続けて出演した。1日目のテーマは「食育」。

 近ごろ、若者の朝ご飯抜きや子どもの孤食が問題になっている。家族そろって「いただきます」と食卓を囲んだのは「向田邦子の世界」といってよいほど過去のものになってきた。

 食卓は空腹を満たす場だけではなく、親と子どものコミュニケーションの場でもあった。小説家でありながら、料理や医療にも詳しく「食道楽」の著者で知られる村井弦斎は「教育には知育、徳育、体育などとあるが、一番大切なのは食育」であるといった意味のことばを残している。食は命の根源であるからだ。

 最近は、朝ご飯を食べさせないで保育園に子どもを連れてくる親もいて、職員が「食べさせてくるように」と注意したら、「朝ご飯って食べさせなくちゃいけないんですか」と若い母親に質問されたと聞き、私はショックを受けた経験がある。

番組でご一緒した東京都府中市の是政つくしんぼ保育園園長、西野和子さんが「子どもたちに何をどんなふうに楽しく食べさせるか」を基本にして、新鮮で安全な旬の食材を使った料理を出しているのはすばらしかった。ビデオでは5歳くらいの園児が大人より上手に魚の骨を除いて食べていた。

 核家族化が進んだ食卓では、魚の食べ方を教える年寄りもいない。週に1度か2度でもよい。子どもたちと食卓を囲む機会をつくり、郷土料理や、おじいちゃん、おばあちゃんの自慢料理を食べさせたり、それとはなくマナーを伝えていくのも、私たち老人の仕事ではなかろうか。

14s.JPG (26176 バイト)

(イラスト阿部早子)

  2日目のテーマは「スローフード」。「スローフードな人生!」の著者である島村菜津さんのお相手だった。イタリアの田舎町で1986年に始まったスローフード運動は、2000年には世界中に約6万人の会員を持つ協会に発展したという。

 これはファストフードの不買運動でもなく、単に食事をゆっくり食べようというものでもない。スピードを追求してきた20世紀を反省し、郷土料理の風味と豊かさを再発見しようといったもの。失われていく食文化を次の時代にも伝えるという点で、食育にもつながるものだ。

 まだ遅くはない。私たちも自信を持って日本の食生活のよさを、次世代に伝えていきたいものだ。 

BACK