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年経るごとに味が増す泡盛

 岸 朝子  

沖縄といえば酒は泡盛。泡盛は焼酎の仲間というより元祖に当たります。酒には、日本酒やワインのように米や果実などに含まれる糖類を発酵させてつくる醸造酒と、発酵させた酒をさらに蒸留してアルコール濃度を高めた蒸留酒があります。泡盛は蒸留酒で、酒税法では焼酎乙類に入る個性の強い酒です。1983年から、さつま芋や米、麦などが材料の本格焼酎と区別して、米だけでつくる泡盛は「本場泡盛」と表示されるようになりました。

泡盛の歴史は古く、15世紀半ばの琉球王朝時代、交易があったシャム(現在のタイ)から伝来したといわれています。そして、当時は琉球王国に属していた奄美諸島を経て鹿児島に伝わり、北上して九州一帯に広まって焼酎となりました。

泡盛製造の特徴は、硬質のタイ米を材料に、黒麹菌を用い、原料米のすべてを麹にすることです。一方、焼酎の場合は白麹菌を用い、原料米の3分の1をまず麹にし、残り3分の2にその麹を混ぜて発酵させます。このような製造の違いに加え、泡盛は熟成期間を長くとることで、まろやかな味と、独特の味わいを生み出します。昔は材料に米のほか、粟を使ったことから、泡盛という名が付いたといわれていますが、ほかにも名の由来には諸説あります。

酒の神様といわれた東京大学名誉教授の坂口謹一郎博士は第二次世界大戦前に沖縄を訪れ、泡盛に出会って感激され、「沖縄に名酒あり」ということばを残されましたし、最近ではソムリエ世界一の田崎真也さんが泡盛の古酒(クース)を飲み、「日本にこのような酒の文化があったのか」とたいそう驚いたと、私に話していました。

古酒は製造してから3年以上ねかせたもので、シャムから渡来した南蛮焼と呼ぶ焼きしめのかめに貯蔵します。ただし、ねかせておくとはいっても放っておくのではなく、仕次(しつぎ)という独特な手法で熟成を行ないます。年数を経た順に1番、2番、3番などと分けて、それぞれかめに貯蔵し、1番の酒を汲み出したら2番の酒を足し、2番の酒には3番の酒を補うという方法で、これは沖縄にしかみられない酒文化です。古酒はさわやかな香りで、味も年月を経たものほどまろやか。戦争で焼失するまでは、200年、300年の古酒もあったといわれます。現在市販されているのは3年、8年、12年などが多く、30年のものもあります。

私はオンザロックで飲むのが好きですが、沖縄の人たちは小さな器でストレートで飲むことが多いようです。アルコール濃度は25度から45度まであるのでご用心。離島の与那国島でつくられる「どなん」の花酒は60度で、酒税法ではスピリッツ類に分類されています。

酒器もいろいろで、徳利のほかに、餅形の胴体に細い注ぎ口があるカラカラや携帯用の抱瓶(ダチビン)などがあります。抱瓶は三日月形で、両側の耳に紐を通してからだに巻きつけるようになっていて、馬に乗って出かけるときに用いたといわれています。また、杯に1杯ずつしか出てこない仕組みのおもしろい酒器もあります。